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岩波講座 現代社会学〈1〉現代社会の社会学 [岩波講座 現代社会学〈1〉現代社会の社会学]
岩波講座 現代社会学シリーズは、2000年代以降の日本で注目される社会的格差の問題、
あるいは階層と教育などの実態を明らかにし研究領域を扱う
岩波講座の、現代社会学全26巻の第1巻。
岩波講座 現代社会学〈1〉現代社会の社会学
編集委員が井上俊、上野千鶴子、大澤真幸、見田宗介、吉見俊哉の各氏ということで、
興味があって読んでみた。
収録されている論文は収録順に、
見田宗介「声と耳 現代文化の理論への助走」
井上俊「動機と物語」
上野千鶴子「<わたし>のメタ社会学」
大澤真幸「<資本>の想像力 −精神分析の誕生ー」
吉見俊哉「アメリカナイゼーションと文化の政治学」
冒頭の見田氏の論文は20ページ足らずながら、後続の全巻の全論文へ向けた序論になっている
ように読める。
続いて井上氏の論文、犯罪時の供述に限らず、人が生きる際に常に作り上げている動機、
その軌跡としての物語について平易に論じられている。
ここでの論法は、今では大分流通していて認知度も高いのではと思う。
上野氏の論文は、他のレビュアーさんもおっしゃっている通り非常に知的に厳密に、
読み手にも書き手自身にも厳しい筆致で「自らが社会学すること」について思索を深めていく。
タイトルに示唆されているのは、<わたし>ではなく<われわれ>と記すことで書く主体が
自らの立場を曖昧化する行為への批判だ。
大沢氏の論文は、フロイトの精神分析理論の構築の過程を「父ー子関係」から読み解き、
そこにヨーロッパにおけるユダヤ人に付与された意味性を関係づけることによって精神分析と
資本主義のつながりを読み取ろうとする試み。
読み物として面白く、ここでは論の進め方にもあまり無理がない。
最後は吉見氏の論文、ここでの分析は大澤氏の「不可能性の時代」でも議論のたたき台に
使われていたものだ。
本書は編集委員による丸ごとの序論といった趣があるが、後に続くシリーズも読んでみようと
思わせてくれる1冊だ。
※岩波講座 現代社会学〈1〉現代社会の社会学 レビューより記載
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